もし今日、親御さんが亡くなったとしたら——あなたは何から始めますか?

もし今日、親御さんが亡くなったとしたら——あなたは何から始めますか?

頭が真っ白になりますよね。それは当然のことです。

「役所の手続き、何から始めたらいいの?」「銀行にはいつ連絡するの?」「相続税って、うちはかかるの?」「実家、どうすればいいの……」

こういった声は、相談の現場で毎日のように聞かれます。

まず知っておいてほしいのは、最初から完璧にやらなくていいということです。順番さえわかれば、あとは一つずつ進めていけます。

この記事では、最初の90日間でやるべきことを、全体の流れとして整理してお伝えします。


① 7日以内にやること——死亡届の提出・葬儀

死亡届の提出

死亡届は、亡くなってから7日以内に市区町村の役場へ提出する必要があります。多くの場合は葬儀社が提出を代行またはサポートしてくれますので、相談してみてください。

ここで一つだけ、絶対にやってほしいことがあります。

提出する前に、死亡診断書のコピーを数枚(3〜5枚程度)取っておくことです。

この書類は後々いろんな手続きで繰り返し必要になります。コピーを取り忘れた場合は、作成した医療機関に再交付を依頼できる場合がありますが、手数料や時間がかかることがあります。提出前のコピーが最も確実です。

葬儀・火葬

大切な方を見送ることを最優先にしてください。

ただし、葬儀の領収書は必ず保管しておきましょう。相続税の申告が必要な場合、葬儀費用の一部は相続税の計算で控除できることがあります。後から必要になるケースも少なくありませんので、受け取ったら大切に保管してください。


② 14日以内にやること——年金・健康保険の手続き

年金の受給停止

年金を受け取っていた場合、亡くなった後も年金が振り込まれることがあります。その場合は返還が必要になることがあります。日本年金機構か近くの年金事務所に、早めに確認・届け出をしてください。

なお、現在は死亡届などの情報連携により年金機構が把握するケースも増えています。ただし手続きが完了するまでの間に振り込まれることもありますので、早めに動くことをおすすめします。

ここで大事なポイントがあります。亡くなる前の月分で未払いになっている「未支給年金」は、遺族が請求できます。忘れずに確認してください。

健康保険証・介護保険証の返却

健康保険証と介護保険証の返却もこの時期に行います。国民健康保険か職場の健保かで手続き先が異なります。窓口で葬祭費や埋葬料が支給される場合がありますので、あわせて確認してみてください。

また、介護保険証は返却前に必ずコピーを取っておきましょう。被相続人が要介護認定を受けていた場合、相続税の小規模宅地等の特例を適用する際に証明書類として必要になることがあります。


③ 30日以内に確認すること——遺言書・相続人の確認

遺言書の有無の確認

自宅のタンスや金庫、引き出しを探してみてください。見つからなければ、公証役場で公正証書遺言の検索を依頼できます。また、2020年から法務局(登記所)でも自筆遺言書を預かる制度が始まっています。法務局に保管されている場合は、全国どの法務局でも確認・取得できます。

⚠️ 自宅で自筆の遺言書を見つけた場合は、勝手に開封しないでください。家庭裁判所での検認(遺言書の状態などを確認する手続き)が必要です。法務局で保管されていた自筆証書遺言を除き、勝手に開封すると過料(行政上の金銭的な制裁)の対象となる可能性があります。

相続人の確認

亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて取り寄せて、相続人を確定します。前の結婚のお子さんや、認知したお子さんがいるケースでは、思わぬ相続人が判明することがあります。早めの確認が大切です。


④ 3か月以内に判断すること——相続放棄・財産調査

相続放棄をするかどうか

相続放棄の期限は、相続の開始を知ったときから原則3か月以内です。この期限を過ぎると、原則として相続放棄ができなくなり、借金なども含めて相続することになります。

ですから財産調査は、できるだけ早く始めてください。3か月以内に調査が終わらない場合は、家庭裁判所へ期間伸長の申立てができます(必ず認められるわけではありませんので、早めに動くことが大切です)。一人で抱え込まず、専門家に相談してください。

財産の全体像を把握する

以下をリスト化しましょう。

  • 預貯金(通帳・キャッシュカード)
  • 不動産(土地・建物の権利証)
  • 株式・投資信託
  • 生命保険(保険証券)
  • 借入金・連帯保証
  • クレジットカードの残債
  • サブスクリプション・デジタル資産(スマホの中も確認)

なお、相続税の申告が必要な方は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税を行う必要があります。対象になるかどうかわからない場合は、早めに税理士へ相談しましょう。


⑤ 実家については早めに家族で話し合いを

相続でいちばんトラブルになりやすいのが、実家(不動産)の扱いです。売却するのか、誰かが住み続けるのか、賃貸として活用するのか。結論は急がなくて構いません。ただ、方向性だけは早めに家族で共有しておくことを強くおすすめします。

後回しにすると、空き家の管理費や固定資産税がかかり続けます。さらに2024年4月から相続登記が義務化されており、相続を知った日から3年以内に登記を行う必要があります。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。早めに動くことが、結果的に家族みんなを守ることにつながります。


まとめ——この順番を頭に入れておきましょう

  1. 死亡届・葬儀(7日以内)——診断書のコピーを忘れずに
  2. 年金停止・保険証返却(早めに)——未支給年金も確認を。介護保険証は返却前にコピーを
  3. 遺言書の確認・相続人の特定(30日以内)——自筆遺言は開封禁止
  4. 財産調査・相続放棄の判断(3か月以内)——迷ったら早めに専門家へ
  5. 実家の方向性を早めに家族で共有——相続登記は3年以内に

相続で一番つらいのは、何から手をつければいいかわからないまま、時間だけが過ぎていくことです。

でも今日この記事を読んでくださったあなたは、もう大丈夫です。順番さえわかれば、必ず一歩踏み出せます。

大切な方を亡くされた悲しみの中で、こういった手続きに向き合っているあなたのことを、心から応援しています。焦らず、一つずつ進めていきましょう。


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増島正典(ますじま まさのり)
1級FP技能士・CFP® / 不動産・相続コンサルタント
不動産業界32年の経験をもとに、相続・老後のお金の不安をわかりやすく解消します。

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