介護が必要になった親の住まい。
使わなくなった家を売却し、
施設費用に充てたい──。
そんなご相談を受けることは
年々増えています。
でも、ただ「家を売る」だけでは
済まないのが現実です。
今回は、実際に私が経験したご相談を
もとに、成年後見制度が必要になった
ご家族のエピソードをご紹介します。
きっかけは一本の電話「母の家を売りたい」
ある春の日、
1本の電話がかかってきました。
「母が施設に入っており、
住んでいた家を売却したい。
相談に乗ってもらえますか?」
話を伺うと、ご本人はすでに介護施設に
入居されていて、息子さんが代わりに
手続きを進めようとしている状況。
目的は、施設にかかる費用の
捻出でした。
元気そうに見えた母、でも…
後日、施設でお母さまと面会させて
いただきました。
白髪を整え、ブランケットを膝にかけて
穏やかに座るお姿。
一見、健康そうに見える方でした。
「お名前を書いていただけますか?」
とお願いすると、手が大きく震えて
しまい、最後まで文字を書ききれない。
話しかけても、内容をすぐに忘れて
しまう様子が見られました。
医師の診断と「契約の壁」
不動産売却には、所有者本人が
契約内容を理解し、意思表示できる
ことが不可欠です。
そこで、施設の主治医と
面談を行いました。
「判断能力にはかなりのばらつきが
あります。売買契約などの重要な
契約行為は、現時点では難しいで
しょう」
この診断により、通常の売買手続きが
できないことが明らかに。
医師からは、成年後見制度の利用を
提案されました。
成年後見制度で進める決断
「まさか、母の家を売るのに裁判所の
手続きが必要になるなんて…」
息子さんは最初、
戸惑いを隠せませんでした。
しかし、母の将来の安心のためにと
決意され、当社が提携する弁護士を
紹介し、家庭裁判所への申し立てが
始まりました。
売却手続きは、後見人が選任された
後に、法的に適正な方法で進められる
ようになります。
不動産の売却代金は、お母さまの
生活費として適切に活用されること
になります。
まとめ:親が元気なうちに考えておくべき「備え」
高齢の親の不動産を売却しようとした
とき、「売れるかどうか」ではなく、
「契約ができる状態かどうか」が大きな
ポイントになります。
今回は成年後見制度で対応できました
が、もっと早い段階であれば、
任意後見契約や家族信託といった、
より柔軟な選択肢を選ぶことも
可能でした。
▼あなたにできる第一歩
親が元気なうちに、相続や資産の
話をしておく
売却や管理について、
法的なアドバイスを受けておく
成年後見制度や家族信託など、
制度の違いを知っておく
「まだ大丈夫」と思っている今が、
実は一番のタイミングです。
もし同じようなお悩みがある方は、
早めのご相談をおすすめします。
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