部長だった夫を見送った奥様、涙のない相続の物語

【ビフォー】一本の電話から始まった静かな決意

「相続のことで相談したい
 のですが・・・」

電話の向こうの女性の声は、どこか
張りつめているようで、でも毅然とした
響きがありました。

現役で部長職にあったご主人が急逝され
たという知らせを受け、私はすぐに
ご自宅を訪ねることに。

玄関を開けると、白を基調とした
落ち着いたリビング。
壁には部下たちとの記念写真や、
ご主人が表彰された盾が飾られて
いました。

「夫は本当に仕事一筋の人でした。
家族との時間は少なかったけれど、
きちんと備えてくれていたんです
 ・・・」

奥様は静かにそう話しました。

ご主人の遺した財産は次のとおりでした

自宅(土地建物):
 相続税評価額3,800万円

死亡退職金:2,500万円

死亡保険金:4,000万円

個人年金の評価額:700万円

【葛藤】「相続税を払いたくない」本音と誠意の間で

相続人は奥様と息子さんのお二人。

「相続税をできるだけ払いたくないん
 です。できれば、私が全部相続して
 もいいと息子も言ってくれていて
 ・・・」

奥様はそう語りましたが、
その言葉には感謝と申し訳なさの
両方がにじんでいました。

私は丁寧に制度の説明を始めました。

「配偶者には、相続税の“配偶者の
 税額軽減”という特例があります。
 法定相続分か1億6,000万円の
 どちらか多い金額までは、
 相続税がかからないんです」

視覚的に理解できるように、
図を交えてお見せすると、
奥様は手元の資料を何度も見つめながら
「そんな仕組みがあるんですね・・・」
と、ほっとした表情を浮かべました。

【転機】家族の合意で心がひとつに

息子さんも同席し、3人で話し合う
場を設けました。

「お母さんが安心して暮らしていける
 なら、僕はそれでいいよ。
 いずれは僕にも残してくれるだろ
 うし」

その言葉に、奥様は静かに涙をぬぐい
ました。

「ありがとう。
 あなたのお父さんが大切にしてきた
 この家を、ちゃんと守っていくわね」

相続財産のすべてを奥様が相続する
ことでまとまり、相続税は発生しない
形で手続きが完了する見通しとなり
ました。

【アフター】安心と感謝に包まれた暮らしへ

「何より安心しました。あれから夜も
 よく眠れるようになって・・・」

数週間後、奥様から届いた手紙には、
そう綴られていました。

ご主人の想いをつなぎ、ご家族の心が
ひとつになったことで、トラブルの
ない、そして涙の少ない相続が実現
しました。

相続は、単なる財産の分け方では
ありません。

そこには、想い、信頼、未来への橋渡し
があるのです。

もし、同じように「これからどうすれば
・・・」と不安に思っている方がいたら
ぜひ早めのご相談を。
誰かと話すことで、心も手続きも、
きっと軽くなります。

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