兄弟7人、想いをつなぐ相続の物語

【ビフォー】突然の連絡と胸騒ぎ

ある日、私のもとに一本の電話が
入りました。

「弟の家を売却したくて・・・
 ちょっと相談に乗ってもらえ
 ませんか?」

声の主は、70代の男性。
穏やかな声の奥に、どこか不安な
響きがありました。

早速お話を伺うため、
ご自宅を訪問することに。

玄関を開けたその瞬間、私は空気の
重さを感じました。
少し古びた木造住宅。
部屋には、亡き弟さんの思い出が
そのまま残っているようでした。

「弟は独身で、ひとり暮らしでした。
 ある日、風呂場で倒れて亡くなって
 いるのを見つけたんです・・・」

話しながら、男性の目にはうっすらと
涙が浮かんでいました。

弟さんには奥さんも子供もおらず、
ご両親も既に他界。相続人は兄弟姉妹
のみ。なんと7人兄弟で、亡くなった
弟さんを除いた6人の兄弟が相続人に
なります。

【葛藤】「いらない!」と言われた遺産

「正直、弟の遺産なんて欲しいとも
 思っていないよ」

そう言ったのは、兄弟のうちの2人。

感情的な問題や、関わりたくないという
気持ちもあるのでしょう。
相続放棄を選ぶ方は少なくありません。
ですが、その一言の裏には、思い出や
複雑な感情も絡んでいるように
思えました。

残りの兄弟たちは、弟の遺した家をどう
すべきか話し合いを進めていきます。

「家は売却して、必要な整理を進めた
 い。できるだけ手続きもトラブルなく
 済ませたいんです」

その願いを叶えるためには、全員の協力
が欠かせません。

【転機】一歩踏み出す“合意”の力

私は、皆さんと一人ずつお話を重ねて
いきました。

相続の仕組み、家の名義、売却の流れ。
視覚的に分かる資料を用意しながら、
耳で聞き、紙に触れながら確認して
いただきます。

「なるほど、こうやって進めて
 いくんですね」

徐々に表情が和らぎ、協力の空気が
広がっていきました。

「それなら私も協力するよ。放棄じゃ
 なくて、きちんと手続きを踏んで
 整理しよう」

最終的に、2人の兄弟は正式に相続放棄
を行い、他の兄弟で法定相続分に基づい
て遺産分割を進めることで合意。
売却に必要な手続きもスムーズに整い
ました。

【アフター】心をつなぐ相続の終わり方

こうして、弟さんの住んでいた家は無事
に売却され、相続人間のトラブルも一切
なく、整理が完了しました。

「弟のこと、ちゃんと見送れた気が
 するよ」

相談者の男性がそう言ったとき、私も
思わず胸が熱くなりました。

相続は「お金」の問題であると同時に、
「心」の問題でもあります。

データや理屈だけでは動かないものが、
丁寧な対話と共感によって解決できる
こともあるのです。

もし、似たような状況で悩んでいる方が
いれば、まずは一歩踏み出してみて
ください。

専門家の力を借りながら、家族の想いを
大切にした相続が、きっと可能になる
はずです。

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