ある日突然、夫を失った——そして遺言書が残された

静かな午後、佳子さん(58歳)は
夫の遺品を整理していた。

「まさかこんなに突然・・・」

夫が旅立ってから、まだ実感が湧かな
い。家の中には彼のぬくもりが残って
いるのに、もう話しかけることはでき
ない。

そんな時、机の引き出しの奥から封筒が
出てきた。

「これは・・・?」

封筒には、夫の筆跡で「遺言書」と
書かれていた。

手が震えた。

「遺言書があるなんて、
 聞いてなかった・・・」

家族を集め、家庭裁判所で検認の手続き
をとった。
そして開封された遺言書には、
夫の意志がはっきりと記されていた。

遺言書の中身

予想外の相続分割

夫の財産は以下の通りだった。

土地600坪(時価1億3000万円)
自宅の土地・建物(4000万円)
預貯金(5000万円)

佳子さんは、当然すべての財産を子ども
たちと分けるものと思っていた。
しかし、遺言書にはこう書かれていた。

佳子さん:2/8
(主に自宅の土地・建物と預貯金)
長男:1/8
長女:1/8
夫の妹の長男:2/8
夫の妹の長女:2/8

「どうして夫の妹の子どもたち
 にまで・・・?」

理由は、夫の祖父の代まで遡ることに
なる。

先代の相続

長男だけが財産を継いだ時代

遺言書の最後には、夫の思いが綴られて
いた。

「私の父が亡くなったとき、私は家督相
 続により全財産を引き継いだ。
 その時、妹には何も残せなかった。
 妹の子どもたちに、少しでも財産を
 分けてあげたい。」

佳子さんは、夫の妹家族とそれほど深い
付き合いはなかった。

「でも、夫にとっては気がかりだった
 のね・・・」

子どもたちは困惑していたが、
結果的に相続人全員が遺言書通りに
遺産を分けることで合意した。

実際の相続手続き

土地の売却と分割

遺言書の指示に従い、土地600坪は
売却されることになった。
売却額は1億3000万円。
そこから税金や諸費用を差し引いた
上で、遺言書通りに分割された。

佳子さんは自宅の土地と建物を相続し、
残りの分を預貯金から取得する形と
なった。

「これで、安心してこの家に住み続け
 られるわね・・・」

相続を終えて

夫の思いを受け継ぐ

相続が完了した頃、佳子さんは夫の写真
を見つめながら静かに言った。

「あなたの気持ち、やっと理解できた
 気がするわ。」

人生には、受け継ぐべき思いがある。

夫の遺言は、家族に少しの驚きと考える
時間を与えたが、最後にはそれぞれの
未来に向けた新たな一歩を踏み出すこと
となった。

相続は単なる財産の分割ではなく、大切
な人の思いを受け継ぐことなのかもしれ
ない。

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