あのマンションの鍵を
渡した日のことを、
私はきっと一生忘れない。
南向きの和室に朝の光が
ふわっと差し込む。
ダイニングキッチンの片隅には、
ひとり分のテーブルと椅子。
まだ独身だった私が、初めて手に入れた
“自分だけの場所”だった。
自分好みに整えた空間で、
好きな音楽を流しながら
キッチンに立ち、食事を済ませる。
使い勝手は決して広くはなかった
けれど、それもまた心地よかった。
数年後、人生の転機が訪れた。
結婚し、妻と2人でこの3DKに
暮らし始めた。
「ちょっと狭いけど、
まあ、なんとかなるかな」
そんなふうに笑い合いながらも、
部屋の使い方には
常に工夫が必要だった。
どの部屋を寝室にして、
どこを共有スペースにするか。
洗濯物を干す場所や、
収納の優先順位をめぐって、
ちいさな衝突もあった。
そして──待望の第一子を授かった。
その瞬間、「この家ではもう限界だ」
と直感した。
子どもがハイハイするスペースも
なければ、ベビーベッドを置く場所
にも困る。
荷物が増え、生活動線も複雑になり、
気持ちに余裕がなくなっていった。
そんな時に見つけたのが、
今の家から歩いて10分ほどの
場所にある、築10年の3LDKの
マンション。
敷地が広く、すぐ隣には
緑あふれる公園。
「ここなら、のびのび子育てが
できそうだ」
そう確信した。
でも、問題は
“買い替えのタイミング”。
今のマンションを売らなければ、
新しい住まいに手が出せない。
同時に売買が成立する保証なんて
どこにもない。
二重ローンだけは避けたい。
そんな不安を抱えていたとき、
信頼できる不動産の担当者に出会えた。
「このタイミングなら、
売却も購入も無理なく
進められますよ」
そう言ってもらえたことで、
ようやく心が決まった。
結果、売却価格は相場より100万円
ほど安くなったけれど、
売却と購入のタイミングを合わせられた
ことは何より大きかった。
しかも、売却益に1,000万円ほどの
上乗せがあり、新しい住宅ローンの
負担も想定内で収まった。
引っ越し後、新しい3LDKの
住まいでの暮らしが始まった。
広々としたリビングには
赤ちゃん用のプレイマット。
陽の差し込むダイニングで、
3人で食事をする時間が、
何よりの幸せになった。
「思い切ってよかったね」
ある夜、妻がポツリとつぶやいた。
あのときの決断が、私たちのこれからの
暮らしを支えている。
まとめ:
家の買い替えには、タイミング、
資金、そして信頼できるパートナーが
不可欠。
でも何より大切なのは、
「家族とどう生きたいか」という
ビジョン。
それが定まれば、不思議と選ぶ道は
明確になる。
これから家族が増える方、
住み替えを考えている方の背中を、
少しでも押せたら嬉しいです。
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